3月29日、福島県いわき市にあるいわき市生涯学習プラザにて、映画『こども哲学〜アーダコーダのじかん〜』の上映会と哲学カフェが開催されました。本イベントは「てつがく対話いわきAfter」の主催により行われたもので、アーダコーダ代表の角田がゲストとして登壇し、上映後の哲学カフェの進行を務めました。
上映された映画『こども哲学〜アーダコーダのじかん〜』は、子どもたちが日常の中で問いを見つけ、考え、語り合う様子を記録したドキュメンタリーです。問いに出会うことで何気ない日常が少しずつ色づいていく様子や、子どもたちの真剣なまなざしが、観る人の思考を静かに揺さぶるような作品です。この日の哲学カフェは、まさにその映画で描かれた“問いとともにある時間“を、大人たち自身が味わう場ともなりました。
哲学カフェには5〜6名の参加者が集まりました。福島県内で教員をされている方、地域で継続的に哲学カフェに参加されている方など、対話に親しんできた方々が多く、さらにその中には小さな赤ちゃんを連れたご夫婦の姿もありました。世代の交差するあたたかな雰囲気の中で、哲学カフェは始まりました。
この日は、あらかじめ用意された問いではなく、その場にいる参加者一人ひとりから「今、自分が考えたい問い」を出していただくところからスタート。「日記ってなんで書くんだろう?」「正解を求めてしまうのはどうして?」「人はどういう時に罪悪感を感じるのか?」「家ってなにか?」など、さまざまな問いが並ぶ中で、「歳を重ねるってどういうことだろう?」という問いが、その日の場に自然に立ち上がってきました。問い出しのプロセスそのものがすでに豊かな対話であり、それぞれが今どんな関心や気持ちを抱えているかが静かに共有されていきました。
本編では、「歳を取る」と「歳を重ねる」の言葉の違いに注目が集まりました。「取る」には減っていく感覚、「重ねる」には積み上げていく感覚があるという気づきや、歳を重ねることに嬉しさを感じる人とそうでない人とのあいだにある、意味づけの違いが語られていきました。
赤ちゃんの存在は、「これから歳を重ねていく」時間のはじまりを象徴するようでもあり、「歳」というテーマにあらためて多様な奥行きをもたらしてくれていたように感じます。その場にいる人たちの言葉から生まれた問いを、その人たちとともに考える——哲学カフェの醍醐味が静かに息づくひとときとなりました。
(ライター:つの)