3月の「哲学プラクティスあれこれゆるゆるトーク」では、東京大学大学院博士課程に在籍し、こども哲学の実践・研究に取り組む後藤美乃理さんをゲストに迎え、「映画『ぼくたちの哲学教室』の舞台を訪ねて」というテーマでお話をうかがいました。
トークの前半では、2024年に後藤さんが訪れた北アイルランド・ベルファストのホーリークロスボーイズ小学校におけるこども哲学の取り組みについて紹介がありました。
映画『ぼくたちの哲学教室』の舞台でもある同校では、イギリスの哲学プラクティス団体、The Philosophy Foundationが展開するPhiE(Philosophical Enquiry)の考え方に基づいた授業が実践されています。発表では、「まず考える」「さらに考える」「考えた上で行動する」(TTR: Think–Think–Respond)というステップや、問いを共有するだけでなく、身体を使った表現(ダンスや歌)を取り入れた活動の様子も紹介されました。子どもたちの姿が生き生きと伝わってくるようで、聞いているこちらまでわくわくするような内容でした。
また、ホーリークロスボーイズ小学校では、複数年にわたり哲学の授業が継続的に行われており、日常の中に哲学的な対話の時間が組み込まれているらしいです。
後半の「みんなでトーク」では、多くの質問が寄せられ、「ホーリークロス男子小学校では哲学の歴史も教えているのか」「年間で授業はどれくらいあるのか」など、実践内容に関する質問のほか、「家庭でできる問いかけはあるか」「p4cとPhiEの手法をどのように使い分けているか」といった質問もありました
また、「哲学対話のハードルが下がった」「もしも~なら?という問いの形が多様性を受け入れるきっかけになると感じた」などのコメントも共有され、参加者それぞれが自分自身の実践と照らし合わせながら聞いていたことがうかがえました。
参加者からは具体的な書籍や教材に関する質問も寄せられ、後藤さんからは『こどもたちが考え、話し合うための絵本ガイドブック』『もし友だちがロボットだったら?』などが紹介されました。
今回のゆるゆるトークでは、映画の舞台となった地域での実践を実際に訪れた視点から報告を受け、海外の哲学プラクティスの現場を具体的に知ることができました。子どもたちの哲学がどのように根づき、育まれているのかを垣間見ることができ、とても刺激的な時間となりました。
(ライター:つの)