【開催レポート】哲学プラクティスあれこれゆるゆるトーク

「哲学を仕事にするということ」12月の哲学プラクティスあれこれゆるゆるトークのテーマは「哲学プラクティスとビジネス」。今回は、香川県で2016年に喫茶 Tetugakuya を立ち上げ、2024年には哲学プラクティス事業を法人化された、一般社団法人てつがく屋代表の杉原あやのさんをゲストにお迎えしました。哲学を生活や仕事にどう組み込むかを実践的に模索してこられた杉原さんのお話は、哲学と社会のつながりを考えるうえで示唆に富むものでした。

前半は杉原さんご自身の原体験として、哲学との出会いや進路選択の迷いについて語っていただきました。研究と実践、働くことと生きることのあいだで葛藤しながらも、「人と対話すること」「考える時間を持つこと」への思いが、喫茶店というかたちで現れていったプロセスが印象的でした。なかでも、「喫茶店という場所がそもそも哲学対話的である」という視点は新鮮で、日常のなかに思考と対話を育む空間を自然とつくり出していたことが伝わってきました。

後半のトークでは、哲学プラクティスのビジネス化における仕組みや課題に焦点を当て、法人化の経緯や現在進行中の取り組みについて具体的に紹介していただきました。特に印象的だったのは、哲学や対話が「商品」になることで生じる倫理的なジレンマです。たとえば、喫茶店という営みの中で、対話の相手が生活を支える存在であるという現実。あるいは、お客さんからの評価が、場のあり方に無意識に影響を与えてしまうこと。そうした関係性の中で、いかにして「自由に考える」ことを守るのか。杉原さんは、経済的な持続可能性と哲学的な誠実さのバランスを常に問い直しているのだと感じました。実践の知恵と現場感覚に満ちたお話は、哲学を生活に根ざしたかたちで広げていくヒントに満ちており、参加者にとっても考える種がたくさん撒かれる時間となりました。
(ライター:つの)

次回のゲストは東京大学大学院博士課程の後藤美乃理さん。2024年に後藤さんらが視察された映画『ぼくたちの哲学教室』の舞台、ホーリークロスボーイズ小学校におけるこども哲学の取り組みや、イギリスの哲学プラクティス団体『Philosophy Foundation』代表のピーター・ウォーリー氏のこども哲学に対する考え方について、あれこれゆるゆるとお話を伺います。

[ 主催 ] NPO法人こども哲学・おとな哲学アーダコーダ
[ 日時 ] 3月25日(火) 20:00~21:30 (アーカイブ配信あり)
[ 場所 ] オンライン
[ 対象 ] 定員50名
[ 参加費 ] 1,500円
[ 申込方法 ] Peatixページから詳細・お申込はこちら

この記事を書いた人

アーダコーダ事務局