【開催レポート】「アーダコーダ絵本哲学カフェ@オンライン<絵本:『たまごにいちゃん』(作・絵: あきやま ただし、出版社:鈴木出版)」(2/9オンライン)

2月の「アーダコーダ哲学カフェ」は絵本を用いて対話を行いました。

進行役は、井尻貴子さん。哲学カフェに参加するのが初めての方、アーダコーダの哲学カフェが初めての方、絵本に興味があって参加された方など13名のご参加でした。

まず最初に井尻さんが『たまごにいちゃん』の絵本を朗読し、その後ぐるっと一周感想を共有しました。
・変化を求められているときに、「今のままがいいのにな」と思う自分と重ね合わせて聴いた。
・「変わらなきゃいけないのかな、私は私じゃいけないのかな」と思った。
・たまごにいちゃんが、「このままでいたいな」と思っていること自体が彼の成長なんだろうなと思った。
・そのときしか感じられないことってたくさんあるから、母親目線で見てみると、見守れたらいいなあと思った。
・おにいちゃんは殻を破るのをいやがっていたのに、いざ割れたあとにがっかりせず意外にすんなり受け入れていて、なんでそんなに素直に受け入れられたのかなと思った。

といった感想を出していただきました。
ご自身やお子さんに重ねながら聞いていた方が多かったようです。その後、感想のなかですでにたくさん出てきた表現なども使いながら、哲学対話の問いを考える時間を取り、みなさんに出していただきました(→写真)。
どれもこれも考えたくなるおもしろそうな問いでしたが、時間の関係で多数決で問いを決めたところ「殻をかぶったまま成長したとしたら、おにいちゃんはどんなふうになったんだろう?」という問いが選ばれました。

・最近、Youtuberでは1つのことに特化した人が多い。殻をかぶった状態を楽しんでいるのなら、それは強みになるし、そのまま楽しく生活できていたんじゃないか。
・結局成長できなくて、殻をかぶったまま腐っていくイメージがわいた。殻はやぶらなければいけないものなんじゃないか。
・殻の中にいるおにいちゃん本体は、身体は大きくなってしまうけれど、殻は大きくならないで同じ大きさのままだから、自然と割れてうすくなったり、はがれていくんじゃないか。
・内側では体の成長はどんどん進んでいて、自分がそれを受けとめられるときに殻がやぶれるんじゃないか。身体の成長は内側では進んでいる。
・殻は成長しない?殻もそこそこ変化していくのかと思った。
・ずっと1人でいたら、まったく殻にひびが入らず腐っていくこともある。他の存在との関りがあったから割れた。いろんな人と接点があったことが成長には大事なんだなと思った。
・たまごにいちゃんが殻をかぶったまま成長したときに、殻を破りたいと思う瞬間ってどんなときだろう?たとえば女の子に出会って、仲良くなりたいと思ったときに、相手の女の子を通して自分を見つめ直す、その瞬間がきたときに殻を破りたいと思うのかな。殻をやぶるのがいいとか破らないのがいいということではなく、いろんな人と関わることで「自分って何なのかな」と見つめること。そんなときに殻を破りたいと思うのかな。
・殻が割れないようにいつも気を付けていたり、自分はこうしたいんだとはっきり言えるというのは、自我が成長しているからこそとも言えるのではないか。
・殻ってなんなんだろう?自分を守ってくれるもの、自分にとって居心地のいい環境、お母さんの腕のなかにいるような感覚?おにいちゃんはそれを手放したくなかったのかな。
・殻というのは、みんなが脱いでいるものだからそれを脱がないというのは、常識から外れてしまっているというイメージがあったが、逆にそれを強みに、例えばYoutuberになってみるということもできる。
・殻は成長しなくても、ヤドカリのように、成長に合わせて殻を変えることは可能なんじゃないか?
・殻というのが、自分が安心できる、守ってくれるお守りみたいなイメージであれば、常に自分とともにあるものとも言える。それは成長に応じて変わってくることもあるし、それがその人の個性なのかな。
・殻のなかが居心地がいいと思っているけど、割れないように怯えながらハラハラしながら生きていくことになる。そういう弱い部分も持ちながら、それも個性として成長していくのかなと思った。

絵本の話の続きを話すというよりも、たまごにいちゃんを通して、「人が成長するとはどういうことか?」「殻とは何か?」について、みんなで一緒に考えるような時間になりました。最後にまたぐるーっと、みなさんの感想を伺いました。

・オンラインでは初めて参加したけれど、じっくり考えられてよかった。
・いろんな方の意見を聴けるのが楽しくて充実した時間だった。
・おにいちゃんがうらやましくて、この状態でもよかったんじゃないかなと思った。
・成長とは、自分にとってより居心地のいい殻をみつけてちょっと勇気をもって移り住むことなのかなと思った。
・殻ってなんだろう。一見守ってくれているものなのに、それがつらいものになっていったときに抜けようと思うのかな。
・おにいちゃんの他の人の成長をよろこべる優しさがいいなと思った。
・成長には不安と勇気が必要だと思った。
・殻が何をあらわしているのか、自分に置き換えたときに殻が窮屈になるってどういうことなのかまだわからない。
・殻に注目していたけど、今のままでいいと言われると、そういう視点もあるなあと思った。
・おにいちゃんみたいな存在は、周りの人にとって思い込みを外してくれたり、価値観の枠を広げてくれたり、問題提起の存在になってくれるのかなと思った。
・自分の成長と置き換えて考えたら、これまらも殻をやぶっていかないといけないかなと思った。

みなさんにこやかに頷きながら、ときにぐーっと集中して考えながら、じっくりお互いの話を聞き、ゆっくり考えられる、あたたかい時間になっていたと思います。
ご参加、ありがとうございました。

次回は3/17(日)20:00から、進行役は尾崎絢子さん、テーマは「たいわ」です。
みなさまのご参加、お待ちしています。
★詳細、お申し込みはこちからどうぞ。

(ライター:大前)

この記事を書いた人

アーダコーダ事務局